「賃貸借契約は公証したほうがいいですか?」内見の場で家主の方からよくいただく質問です。当社の答えは、家賃総額や敷金が高額な場合、借主が法人や複数人でのルームシェアの場合、家具家電が充実した物件の場合は、公証する価値があることが多い、というものです。公証書(公證書)に当事者が直接強制執行を受けることに同意する旨(願受強制執行)を記載しておけば、家賃滞納や明け渡し拒否が起きたとき、家主は民事訴訟で勝訴しなくても、裁判所に直接強制執行を申し立てられます。
このガイドでは、公証費用の計算方法、公証が向いているケース、必要書類と手続きの流れを説明します。強制執行条項は借主も署名を求められるものですので、借主の方にもお読みいただきたい内容です。
押さえておきたい3つのポイント
- 最低費用:NT$1,000(目的物の価額(標的價額)がNT$200,000以下の場合)。
- 強制執行条項:基本料金の半額を加算。条項があれば、滞納や明け渡し拒否の際に直接強制執行へ進めます。
- 窓口での所要時間:30〜60分(書類がそろっている場合)。
これらは公証法第109条(公證法第 109 條)および公証法施行細則第84条(公證法施行細則第 84 條)に基づきます。料金は法定で、2026年に確認した時点で変更はありませんでした。
賃貸借契約を公証する価値
強制執行条項を含む公証済みの賃貸借契約は、家主にとって執行名義となります。借主が家賃を滞納したり、退去や物件の返還を拒んだりした場合、家主は公証書を裁判所に持参して強制執行を申し立てることができ、長い民事訴訟の段階を省けます。また、公証人が契約内容を確認し、リスクのある点を指摘してくれるため条項がより厳密になり、銀行や官公庁でも通用する正式な書類になります。
一つ区別しておきたい点があります。私文書の認証(認證)は署名が本人のものであることを確認するだけで、執行名義にはなりません。強制執行力を得るには、公証書の作成(作成公證書)を依頼し、当事者が強制執行に同意する旨を記載する必要があります。
| 状況 | 公証をおすすめする理由 |
|---|---|
| 金額が大きい | 敷金と家賃の合計が大きい場合(たとえば年間家賃NT$240,000以上)、リスクも機会損失も大きくなります |
| 借主が法人、または入居者が複数 | 社員寮、ルームシェア、短期滞在などは管理を厳密にし、回収のための執行名義を持っておく必要があります |
| 家具家電が充実 | キッチン、家電、造作家具は高価です。引き渡しと修繕の責任を明記し、公証しておくべきです |
当社の見解: 2LDKの物件を社員寮として法人に貸した家主の方がいました。7か月目から3か月連続で家賃が支払われず、法人は退去もしませんでした。契約は強制執行条項付きで公証されていたため、家主は公証書に基づいて強制執行を申し立て、手続きの圧力を受けた法人は数週間のうちに滞納分を支払い、物件を返還しました。公証のおかげで判決を待つことなく、迅速かつ確かな根拠をもって解決できました。
費用の計算方法
お問い合わせページから数字をお送りいただければ、担当者が試算します。計算は次の4ステップです。
- 2つの数字を比べます。(a)敷金を除いた契約期間中の家賃総額、(b)物件の価額、すなわち建物の課税評価額(房屋課稅現值)、土地の場合は公告地価(公告現值)に面積を掛けた額。
- 高いほうに敷金を加えます。これが目的物の価額です。
- 公証書作成の料金区分に当てはめて基本料金を出します。端数は切り上げです。
- 契約に強制執行条項がある場合は、基本料金の半額を加算します。
| 目的物の価額 | 基本料金 |
|---|---|
| NT$200,000以下 | NT$1,000 |
| NT$200,000超〜NT$500,000 | NT$2,000 |
| NT$500,000超〜NT$1,000,000 | NT$3,000 |
| NT$1,000,000超〜NT$2,000,000 | NT$4,000 |
| NT$2,000,000超〜NT$5,000,000 | NT$5,000 |
| NT$5,000,000超〜NT$10,000,000 | NT$6,000 |
| NT$10,000,000超〜NT$50,000,000 | NT$10,000,000を超える部分についてNT$10,000,000ごとにNT$2,000を加算(端数切り上げ) |
| NT$50,000,000超 | それを超える部分についてNT$10,000,000ごとにNT$1,000を加算(端数切り上げ) |
計算結果はあくまで目安です。最終的な金額は案件を扱う裁判所の公証処または民間公証人が決定し、違約金条項は通常、目的物の価額に含めません。
計算例
例A:一般的な住宅の賃貸。 月額家賃NT$20,000、契約期間2年、敷金2か月分(NT$40,000)、建物の課税評価額NT$400,000。家賃総額NT$240,000は課税評価額NT$400,000より少ないため、目的物の価額はNT$400,000+NT$40,000=NT$440,000です。NT$200,000〜NT$500,000の区分に入るので基本料金はNT$2,000。強制執行条項を付けると半額を加算してNT$3,000です。
例B:法人の社員寮。 月額家賃NT$60,000、契約期間3年、敷金2か月分(NT$120,000)、建物の課税評価額NT$1,500,000。家賃総額NT$2,160,000はNT$1,500,000より多いため、目的物の価額はNT$2,160,000+NT$120,000=NT$2,280,000です。NT$2,000,000〜NT$5,000,000の区分に入るので基本料金はNT$5,000。強制執行条項を付けるとNT$7,500です。
当社の見解: 小規模な住宅の賃貸借契約であれば、公証費用はほとんどがNT$3,000〜NT$5,000に収まります。節約できる訴訟の時間や回収コストと比べれば、多くの場合、払う価値のある費用です。
手続きの流れと必要書類
- 契約内容の合意。 公式または標準のひな形を使い、強制執行条項を加え、引き渡し・修繕・支払遅延の条件を定めます。
- 書類の準備。 個人・法人を問わず双方が書類をそろえ、地方裁判所の公証処または民間公証人事務所へ本人が出向きます。
- 公証人による確認。 公証人が適法性と明確さを確認し、文言の修正を手伝ったり、追加書類を求めたりすることがあります。
- 署名・押印。 公証書を受け取った時点で、契約は直ちに強制執行可能になります。
| 当事者 | 必要書類 |
|---|---|
| 家主(個人) | 身分証、権利証または直近の税金通知書、印鑑、家賃振込口座の情報。代理人を立てる場合は委任状と代理人の身分証 |
| 家主(法人) | 会社設立登記の核准書または商業登記の記録、代表者の身分証のコピー、会社印、所有権を証明する書類 |
| 借主(個人) | 身分証、印鑑、送達先住所と連絡先(推奨) |
| 借主(法人) | 商業登記の記録、代表者の身分証のコピー、会社印、使用目的の説明書 |
| 双方 | 契約書案(複数部を推奨)、敷金の条件と受領証、引き渡し時の備品リスト、建物の税金通知書または公告地価の資料 |
当社の見解: 書類がそろい、双方が出席していれば、窓口の手続きは通常30〜60分で終わります。繁忙期や書類の追加が必要な場合は時間に余裕を持ち、事前に予約しておきましょう。
上記のリストは台湾の身分証を前提にしています。外国籍の方は、どの本人確認書類が使えるかを事前に公証処へ確認してください。当社の地政士(代書)が書類の準備をお手伝いします。
よくある質問
「課税評価額」と「建物の評定現在価額」は同じものですか?
同じです。一般に建物の評定現在価額(評定現值)と呼ばれるものは、税金通知書では課税評価額(課稅現值)として記載されており、公証の目的物の価額を比較する際にはこの数字を使います。
敷金は目的物の価額に含まれますか?
含まれます。まず家賃総額(敷金を除く)と物件の価額を比べて高いほうを取り、そこに敷金を加えたものが目的物の価額です。
強制執行条項が家賃だけを対象にしている場合も、半額加算はありますか?
あります。家賃債務について強制執行に合意した場合も同じく半額が加算されます。契約全体を強制執行の対象にした場合に限られません。
法人が家主または借主の場合、公証は義務ですか?
義務ではありません。ただし法人の場合は資金の流れや社員の管理が絡むため、強制執行条項付きでの公証をおすすめします。家賃の未払いや物件の返還拒否があれば、速やかに法定の強制執行手続きに移れます。
管理費や水道光熱費は目的物の価額に含まれますか?
通常は含まれません。目的物の価額は家賃と敷金を基準とし、管理費や水道光熱費は一般に含めませんが、扱いは担当する公証処の運用によります。
まとめ
公証は万能ではありませんが、金額が大きい場合、借主が法人の場合、家具家電付きの物件の場合には、数千台湾ドルで強制執行可能な契約を手に入れる価値は十分にあります。契約が期限を過ぎて期間の定めのない賃貸借に移行した場合にも関わってきますので、定期賃貸借と期間の定めのない賃貸借や賃貸トラブルのガイドもご覧ください。契約条件をお問い合わせページからお知らせいただければ、公証が必要かどうか一緒に判断いたします。その他のガイドは賃貸ガイド一覧にあります。
